「いやあ、やられた。まさか本多が来るとは思ってなかったな。意外だなー」
「……。牧野を助けなくてよかったの? ずっとそこに立ってたみたいだけど」
「俺は負けの決まった勝負には参加しない主義なんだ。無駄な傷は負いたくねーし」
「灰田は昔から賢いよね、変わってない」
それだけ言うと本多くんはこちらに向き直り、ペットボトルを差し出した。
「ありがとう」と手を伸ばすも、まだ体にうまく力が入らず。受け取った瞬間、するりと手のひらを抜けて床に落ちてしまう。
慌ててソファから立ち上がり、拾おうとすれば、目眩のような感覚に襲われて。
ぐらりと傾いた体を、本多くんが咄嗟に抱きとめてくれた……けれど。
「その子、しばらくは立てねぇよ。クスリ飲ませたんだ。感覚も過敏になってっから、迂闊に触れない方がいいかもな」
ただでさえ火照っていた体の熱が、本多くんの腕の中で一段と上がっていく。
「……そんなに睨むな。カメラのデータは消してある。というか、撮ったのは最初の数秒くらいで、あとは全部撮ってるフリしてたんだ」



