暗黒王子と危ない夜



「怖い思いさせて本当にごめん。体、大丈夫?」


急に優しい声になるから、安心して危うく涙が溢れそうになる。目の奥がじわりと熱い。


「おれ、また同じこと繰り返してるな、」


ほら、また──。

本多くんは、あたしが危ない目に遭った時は、あたし以上に傷ついた表情をするんだ。


うまく声が出せず、大丈夫だという意をこめて首を横に振る。

本当はすごく怖かったけど、こうして本多くんが来てくれたから……。


「放課後、教室に行ったら相沢さんいなくて。ほんと、焦った……」


……え?


“教室に行った“。

ということは、あたしを送るために迎えに来てくれた……の?


友達と帰るから送らなくて大丈夫だと三成に託したメッセージは、本多くんに届いていなかった……?


「あの、ほんだくん───」


確かめようと口を開いたと同時、本多くんは立ち上がり、扉の方を見つめた。



「灰田。いつまでそこに隠れてるの」


ドキリとする。

少し間が開いて、その人物はゆっくりと中に入ってきた。