「ごめんね、明日からこの店しばらく営業できない。オーナー動けなくしちゃったから」
冷めた声で本多くんは続ける。
「勝手に悪いけど、中にいた店員にも二度とこの店と関わらないことを“約束”してもらった。見てみぬふりする人間も同罪だからね。……なあ、牧野。聞こえてる?」
まあいいや。と軽く息を吐いたのを聞いて、あたしは恐る恐る目を開けた。
散らばった破片の上に、牧野の体が力なく横たわっている。
「へーき、気を失ってるだけ」
本多くんはそう言いながら倒れたテーブルを元に戻し、牧野の腕を荒々しく引っ張りあげて、ソファの上に寝かせた。
「反対の腕も折ってあげるつもりだったけど。なんか肋骨まで何本かいっちゃってそうだし…」
このくらいで勘弁してあげる、という意味なのだろうか。
牧野を一瞥すると、本多くんはあたしの前にそっとかがみこんだ。



