暗黒王子と危ない夜


そんな思いがかけめぐった。

自分の意識をどうにか他へ逸らそうと、頭の中で、必死で本多くんの輪郭をなぞる。


さらりと綺麗な黒髪。

涼しげな目元。

長い指、耳ざわりのいい、低い声。


……1回目のキスと、2回目のキス。



「 、本多くん──」


無意識にその名前がこぼれた。

牧野の手が止まる。



「なんか、たまんないね。本多の名前なんて呼ばれたら逆効果だよ。背徳感っていうやつかな、ぞくぞく止まんない」



……この人、狂ってる。


されるがまま。

肌が火照って、息が上がって。目が回っているような感覚。

やがて、重心がどこにあるのかすらわからなくなった。

いつの間にか下着が乱され、スカートが捲り上げられる。


「やめ……て……」


気がおかしくなりそうだった。

もうこのままいっそ、意識が飛んでしまえばいい……。


……そう思ったとき。


「牧野、」


あたしに向けられていたカメラが、ふいに下ろされた。