暗黒王子と危ない夜


嘘だとわかっているのなら、初めから聞かなきゃいいのに。


エナさんが昨日本多くんを訪ねたことを確信しているなら、わざわざあたし確認する必要なんてないのに。



「じゃあ、次の質問。この前三崎さんが本多に頼んだのは、どこの組織のデータだ?」

「……え?」


そんなの、あたしが知るわけがない。

本多くんのやってることなんて。

三崎さん──慶一郎さんがいつも、本多くんにどんなことを頼んでいるのかも。



「それと、本多がずっと欲している情報。……あいつ、“こっち”のコンピュータにも侵入してきやがった。本多は何を探してる?」


本多くんが求めている情報。
探しているもの。


──確かに、本多くんは何かの情報を探してるみたいだった。


慶一郎さんの任務のついでに、自分のために情報を盗んだと話していたのを思い出す。

結局、あれは外れの情報だったみたいだけど……。



「早く答えなよ」


ぐっと体を近づけられる。

低い声。冷たい視線。


──分からない。本当に知らない。

そう答えようとした、のに。


次の瞬間、牧野の顔が二重に……ぼやけて見えた。

ぐらりと視界が揺れる。