暗黒王子と危ない夜



「まあいいや。とりあえずこれ飲みな? 萌葉ちゃんのために用意したんだよ」


ゆっくりとグラスを差し出される。

このまま、手を使わずに飲めってこと……?


喉は渇いていても、この人に飲ませてもらうなんて死んでもいやだよ……。



「大丈夫、です」

「なんで? せっかく用意したのに」

「……喉、渇いてないから」


そう嘘を吐いた直後、牧野から笑顔が消えた。



「わかんねぇ子だな。飲めっつってんだよ!」


顔を背ける暇もなく、口元を手で固定される。

牧野の指があたしの口をこじあけ、グラスの中身を無理やり流し込んだ。



「やっ……っう、」


吐き出そうにも、次々に入ってくるから上手く息をすることができず。

酸素を求めて、反射的に飲み込んでしまう。

その一部が気管に入りこんで、むせてしまった。



「俺、嘘吐かれるのがすげーきらいなの。昨日、お前が青藍の倉庫にいたことはわかってんだよ!」