「おまたせ。ずいぶんと静かだね。はい、飲み物どうぞ」
穏やかな笑みを浮かべて、テーブルのにグラスを置く。
どうぞ、なんて言われても両手を拘束されているのだから飲めるわけもない。
もっとも、両手が使えたとしても、こんな状況で素直に受け取るわけもないのだけど、緊張のせいか喉は渇く。
「灰田のドリンクはないんだ〜。ごめんね。欲しかったら、そこの内線使って頼みなよ」
そう言いながら、牧野はあたしの隣にゆっくり腰を下ろす。
それから、口角を緩やかにあげた。
「相沢萌葉ちゃん。中央高校2年2組、出席番号1番。帰宅部。ひとりっ子で、今はお母さんとふたりで暮らしてる」
「……っ」
「なんで知ってるの? って顔をしてるね。黒蘭には有能な情報通がいてさ、そいつに調べてもらったんだ」
自分の知らないところで、身内のことまで調べあげられていたなんて。
思わず身震いしてしまう。



