深川、というのは、三成の話によれば黒蘭の現・総長で……エナさんの恋人。
「人としては、どっちかっつうと本多クンの方が好きだったかな」
かつての黒蘭にふたつの派閥があったとすれば、深川という人と、本多くんは同じくらいの実力があって、それぞれが異なる理念を持っていた……ということなんだろうか。
まだ黒蘭の総長には会ったこともないけれど、DVをするような人間についていきたいなんて、あたしだったら絶対思わないのに。
「今の、牧野には秘密にしとけよ」
「え……?」
「俺は黒蘭の中じゃ、熱狂的な深川信者ってことで通ってんだ」
「………、」
この人が自分を偽ってまで黒蘭にいる理由が少しだけ知りたいと思った。
黒蘭と青藍の違いは、一体なんなんだろう。
「おっと、喋りすぎたかな。もうすぐ牧野が戻ってくるから、俺たちの会話はこの辺で終わりにしよう」
それから間もなくして扉が開き、飲み物の入ったグラスを持った男──牧野が入ってきた。



