「チッ、指紋認証じゃなのか。面倒くさ。パスワード教えてもらってもいい?」
突然目の前に自分のスマホが突きつけられる。
ここで口を閉ざせば何をされるかわからないという恐怖から、6桁の解除番号を正直に答えてしまった。
ロックが解かれたれたあたしのスマホ。
もちろん返してもらえるはずもなく。
「さっき一緒にいた友達の連絡先はどれ〜? 片方だけでいいよ。この、お気に入り登録者の中にいるの?」
「……っ」
「答えないと、お友達も一緒に痛い目見てもらうよ」
低い声にびくりと肩があがる。
「上から、ふたり目……です」
「桃香チャンね。今からこの子に通話繋ぐから、こう言ってくれる? “別の用事を思い出したから、先に帰ってていいよ ” って」
そう言われるやいなや、彼の手でスマホが耳に押し当てられ、数秒後、プツリと呼び出し音が途切れた。
『なにー? スマホあった?』
何も知らない桃香の声。
涙が出そうになった。
助けてって叫びたい。
だけど、こんな危険な状況に、大切な友達を巻き込むことなんてできないから……。



