年上の店員さんに友達のように話しかけ、店員さんはそれに対し敬語で答える。
この場では、年齢による上下関係は全く機能していない。
違和感にぞくりと寒気が走った。
すがるような思いでもう一度カウンターに目を向けてみても、店員さんは視界からあたしを遮断するように深く俯いていて、この人に助けを求めても無駄なのだと悟る。
「抵抗されるとこちらも疲れるので、あんまり暴れないでくださいね」
作られた丁寧な口調が、恐ろしさを一段と引き立てる。
「それと、部屋に着くまで声を上げないように。他のお客さんに助けを求めようものなら、あとでひどい目に遭いますよ」
声を上げるな、抵抗するなと言われても、まず体のどこにも力が入らない。
引かれるがまま足を動かすことしかできず、そのまま、開かれた扉の奥に乱暴に押し込まれた。



