暗黒王子と危ない夜


エレベーターが止まり扉が開く。

抵抗する暇もなく、彼らと一緒に無理やり降ろされてしまった。


目の前にはカウンター。

この状況を見れば、様子がおかしいことに店員さんは気づいてくれるだろうって。
あたしが声を上げれば、助けてくれるだろうって。

……そう、思ったのに。



「あ、ねえ。奥の部屋借りるってオーナーに言っておいてくれる?」



あたしのスマホを持っている彼が、カウンターにいる店員さんに声をかけた。

カウンターにいたのは、さっきあたしたちのお会計を担当した人で。


年齢は30代くらいに見える。明らかにこの男子高校生よりも年上。
メガネをかけていて、真面目そうな顔つきをしていて……。

その人はあたしをちらりと見たかと思えば、すぐに逸らし。



「わかりました」


抑揚のない声でそう言った。


……どういう、こと?

全身から血がサアッと引いていくのがわかる。