「うん、わかった。ありがとう」


三成がハンドルに手をかけると、バイクのエンジンがかかり。


「月曜の朝、迎えに行くよ」


そういえば、朝も一緒に行くことになってたっけと思い出す。
本多くんと一緒に登校するのは今朝限りで、次からは三成が来てくれるという話だった。



「ありがとう」という声はバイクの音にかき消されてしまった。
だけどあたしの口の動きを見て理解したのか、ニッと笑ってうなずいてくれる。



「じゃあな」

そんなセリフを残して三成は去っていった。


あっという間に見えなくなる背中。

さっきまで触れていた体温がなくなるのは寂しい。あたしを気遣ってくれた優しさが胸に残っているから。

奥の方でズキズキと響いていた心の痛みも、少しだけ和らぐ気がした。


玄関の鍵を回しながら、本多くんとのキスと、三成との会話をゆっくりと思い出す。


── “ 七瀬のこと好きなのか。”