.

.


「おい萌葉!いま柳居さん呼ぶから待ってろ」


倉庫から出たあたしの腕を、三成くんが掴んで引き止める。



「いい。自分で帰る」

「はあ?アホか、道も分かんねえくせに」

「……っ」

「何焦ってんだよ。急にどーしたんだ」


両肩を掴まれて、無理やり向かい合わせられた。

外はもう真っ暗。倉庫の中の明かりがうっすらと漏れているだけ。



「別に、なんでもなくて……」

「なんでもないって感じじゃねえだろ。七瀬になんかされたのか?」



本多くんの名前が出て、どきりとする。


外が暗いせいかもしれない。
あまり自分の顔を見られなくて済むから、内側に秘めていたはずの感情が溢れてくるのを、止められなかった。



「……っ、本多くんに、彼女いるの、知らなくて……」


口にした途端、目の奥が熱くなった。

涙が膜を張って景色の輪郭が白くぼやけていく。

こぼれないように、悟られないように、視線をそらした。