本多くんの静かな声に、女の子──エナさんは、びくりと肩を震わせた。
「だって、しょうがないじゃん、寂しかったんだもん……」
消え入りそうな声。
倒れ込むように本多くんに抱きついて、そのまま顔をうずめてしまう。
本多くんの片腕が、彼女の背中にそっと回された。
ぐらりと一瞬、頭の中が揺れた気がした。
血液がどんどん下へ流れていく感覚、あれだけ火照っていた体から、熱がうそみたいに引いていく。
「……三成ごめん。相沢さんと1階に行ってて」
三成くんはすぐには頷かなかった。
「用が済んだらおれも下りてくるから」
三成くんは無言のまま部屋に入ってきて、あたしの肩をやさしく抱いた。
そして、自分のほうへ軽く抱き寄せて。
「俺が手出してもいいってことか?」
そう、一言だけ。
本多くんの返事も聞かないうちに、あたしを連れて部屋を出ていく。
本多くんの顔は見られなかった。
──“あいつ、オンナいるよ”
中島くんの声が頭をよぎった。
“付き合ってはないけど、特定の女がいる”
───バタン。
扉の閉まる音が、やけに冷たく聞こえた。



