抑揚のない声で本多くんが問いかける。

“ 黒蘭のお姫様 ” 。

その言葉が胸に重たくのしかかった。


女の子は質問には答えず、本多くんに詰め寄って服を掴んだ。



「なんで女の子が七瀬の部屋にいるの?」

「この子はおれが連れてきた」


「へえ。他の女連れ込むほど私と会えないのが寂しかったんだね。ようやく女遊びやめたと思ってたのに」

「この子はそういうのじゃない」


本多くんは無表情だった。

冷たい空気を放っているようにも感じるけれど、心の内は読めない。



「そこそこ可愛い子選んでるのもムカつく。私がどれだけ苦しんでるか知ってるくせに、隠れて自分だけ遊んじゃうんだ」

「………」


「相手の子の制服、七瀬と同じとこじゃん。わかった、同じクラスで1番可愛いからとりあえず、みたいなところでしょ。その顔と得意の口説き術使えば、黒髪清楚系も簡単に落とせるもんね! 相変わらず七瀬って──」

「エナ」


本多くんが強めの声でさえぎった。

──“えな“。


この子の、名前……?

ちくりと胸が痛む。



「何かあったなら話聞くから、一旦落ち着いて」