きっと、下にいたメンバーの誰かだろうと思った。

本多くんに何か用があって来たんだろう、と。

だけど次の瞬間、あたしの耳に届いた声は、予想と違うもので。



「七瀬! いるんでしょ〜入るよ?」


明るく弾んだ声に、不意をつかれた心臓がぎゅっと縮まる。

紛れもない……女の子の声。


本多くんの手があっさり──あたしから離れていく。



扉が勢いよく開いた。

まず目に飛び込んで来たのは、ひらりと舞うセーラー服のシルエット。

裾から覗く長い脚、ふわふわなミディアムボブ。


女の子後ろから、三成くんが申し訳なさそうな顔をのぞかせる。


固まったのは、相手も一緒。

あたしを捉えると、大きな目をぱちくりとさせて。



「えっ? 待って待って、意味わかんない。誰その子……」


本多くんがソファから腰を上げて、ゆっくりと女の子の前に立った。


「──“黒蘭”のお姫様が、こんな所に何しに来たの」