「このあいだは、いきなりごめんね。ああいう風になること今までなかったんだけど、相沢さん相手だとあんまり理性きかないのかも」


なんに対する言葉なのか、説明されなくても分かってしまう。


近すぎる距離、誘うような声、甘い視線……。


“あのとき”と重なって、どき、とする。

わざと、重ねているのかも。

頭がふわふわして……夢の中、みたい。



「……嫌? 返事、して」


下から見つめられて、胸がぎゅう、と狭くなる。

自分のことがわからない。
今までにないくらい心臓が暴れて苦しい。



「いや、じゃ、ないよ……?」


恥ずかしさにじわりと涙が滲んだ。

見られたくなくて、また咄嗟に顔を背けようとした。のに。


そうはさせてくれない本多くんが、腕を引く。


目の前に影が落ちて、

唇がやさしく重なった。