──後ろのほうで、鈍い音がした。

うめくような低い声が響く。


あのガラが悪そうな人たちを相手に、暴力なしで事が済むはずがないことは分かっていて。

そんな中に本多くんは……。

ぞくりと背筋が冷えた。


あの人たちとの関係は、どう見ても「友達」という感じじゃなかった。

彼らの恨みを買うようなことをしていたのか……事情は分からないけれど。


あたしは本当に……ひとり逃げていいの?

体育館にいる人たちに知らせるべき?


でも、知らせることで、逆に本多くんに迷惑になったりすることがあるかもしれない……。


走りながらいろんな考えが頭を巡った。

とにかく必死で


──だから、気づかなかった。あたしのすぐ後ろにいた、不敵に笑う男の存在に。

「おい待てよ」

乱暴に腕を引かれた。