暗黒王子と危ない夜


喉元から熱がじわりとせり上がる。


こんなに意識しているのはたぶんあたしだけ。

自分で言ったことに勝手に動揺して、次の言葉が出てこない。

本多くんは相変わらず、余裕な顔で──。



「だったらおれもクラスの男子に申し訳ないな」

「えっ?」

「高嶺の花を独り占めしてて」



……今、なにか聞き間違えた気がする。

耳が悪いのかもしれない。



「そうそう。 今朝、廊下で嫌ってくらい話しかけられて大変だった。相沢さんと付き合ってるのかって」


下から覗き込むようにして見つめられる。


「そんなに好きなら、相沢さんに直接聞きに行けばいいのにね。高嶺の花だから、簡単にはいかないんだろうけど」


また、同じ言葉。

頭の中に次々とクエスチョンマークが浮かぶ。



「ちょっと待って、あの……。聞き間違えだったら恥ずかしいんだけど、高嶺の花って───」

「……うん?」