どんな思いでこんなことをしたんだろう。
その時、いったい何があったんだろう。
自分の存在を否定するかのように、何度も重ねられた黒。ふざけた落書きなんかじゃないと、なんとなく分かった。
「本多くんの中学時代って、どんな……」
無意識に、消え入りそうな声でたずねていた。
「楽しかったよ」
触れていた指先が離れる。だけど、あたしの手には、本多くんの冷たい温度が残ったまま。
「学校でも、黒蘭でも色んなことやった。毎日楽しかったと思う。…… 最初の2年間くらいは」
「……最初の2年間?」
「そこからまともに学校行ってなくて。 気づいたらなんか色々踏み違えてて、少年院送り」
小さく笑ってみせる本多くん。軽々しい話し方をするのはきっとわざとだ。空気が重くならないように、あたしに気を使って……。
無理をしているんじゃないかと苦しくなる。
それでも本当の気持ちは読めない。
打ち明けることに、実際は何の抵抗もないのかもしれないし、避けたい話題だったのかもしれない。
だけどこうやって明るく笑顔を見せられると、もうこれ以上は踏み込むなと言われているようで。
本多くんを見ていると……わけもなく悲しくなる。



