「はい」

テーブルに置かれたのは、2つの紙コップ。

アルバムを広げているあたしの隣に本多くんが座って、ソファがふわりと沈む。


こんな状況……想像して、なかった。



「あ、これ中島」


隣から伸びきてきた手がページをめくって、写った人物を指差す。


中島くんはつくづく、整った顔をしているなあと思う。

中学3年生……およそ2年前。今よりあどけない表情で、白い歯を見せて笑っている。

整っていると言えば、本多くんもそう。


本多くんをひとことで言い表せば「綺麗」なんだと思う。
でも、その一言だけではなにか物足りない。



悪い表情がとても似合う──と言ったら変なのだろうけど。

涼しげな切れ長の瞳は、あたしと違う世界を映している気がする。何かを秘めているような気がする。


滅多に崩れない柔らかい表情も、どこかアンニュイで。どこか遠くを見るような目も、低く沈んだ声も、全部……。


本多くんは時々、

消えてしまいそうなくらい── 儚く、見える。