「どーぞ?」


部屋の中は、それほど広くはなく。

それでも、パソコンが2台と大きめのソファ、本棚に冷蔵庫まで置かれていて、ひとりで作業するには十分な空間だった。


「そこのソファ座って。本棚も勝手に漁っていいよ。……ほとんど三成の趣味だけど」


見ると、少年漫画が巻数順にズラッと並べられていた。スポーツものが多いみたい。

ボクシングに、バスケに野球、バレー。

読んだことのないあたしでも題名だけは知っている有名なものばかり。



「本多くんも漫画とか読むんだね」

「うん。三成に借りたものばっかりだけど、そこにあるのは全部読んだ」


パソコンの前に座った本多くんが、椅子くるりと回転させてこちらを向く。

向かい合わせ。

ふたりきり、だ……。と、今さら緊張が走った。



「……あの、あたしここにいて邪魔じゃない?」

「え?」

「本多くん、調べものするって言ってた……し」

「相沢さんならいいよ」



そう囁いた唇が優しく弧を描いた。