そっと囁かれ、ようやく体が動いた。
「悪いけど手短に済ませてくれるかな。知らない奴らの相手してるほど暇じゃないんだ」
本多くんの煽り口調にひやりとする。
きっと、相手の意識をあたしから逸すために……。
「……俺たちを覚えてねぇだと? おもしれえ冗談だな」
“ 面倒くさいやつら ” と言ってたのがこの人たちのことなら、覚えてないわけはない。
そんなことより、逃げることを考えなくちゃ。
怒りが本多くんに集中し始めている今がチャンスなんだから……。
思い切って地面を蹴った。
──────本多くんの「大丈夫」って言葉は、たぶん嘘じゃない。
あたしがいつまでもここにいる方が、きっと彼の邪魔になる。



