本多くんがそう言い切ったあと、運転席の柳居さんが「ははは!」と笑い声を上げた。



「おい何笑ってんだよ」

「いや失礼。七瀬くんは相変わらずだなと思いましてね」

「あー、痛覚鈍いマゾだからな。 つーかまとめると何? 相手の隙つくるだけなら降参したフリだけでよくねえ? 電話まで使う意味あんのか?」


本多くんに答えを求めるように助手席から身を乗り出した三成くん。


「必要だったんだよ。追い詰められたあと、おれが誰かに助けを求める、っていうシチュエーションが」

「なんで」

「痛めつけられた挙句、味方との連絡手段も奪われたとなれば足掻きようがない。こちらはもう無力だと信じ込ませれば、相手の警戒はほぼ完全に解ける。……その瞬間があればよかった」


窓の外は、いつの間にか見慣れない景色に変わっていた。何度か通ったことはある。たしかここは、西区……の街。