ひとまずは、そういう理由にしておこう。

学校帰りに高級車に乗ってどこかへ向かうなんて滅多にあることじゃないし。未知な展開に心臓が高鳴るのは自然なこと。

一度落ち着こうと、息を吸ってゆっくり吐き出す、
けれど。


「三成の家、リムジン何台も停まってるよ」


本多くんが近い距離でそっと耳打ちしてくるから、鼓動は速まるばかり。


リムジン……。
リムジンってあの、ドラマとかで見る……。


「三成くんの家って、お金持ちだよね……?」

「うん、かなりね。歴史と格式のある華道の本家。椎葉三成は、その長男」

「華道……」


やけに納得してしまった。
ただ派手なわけじゃない、華やかで品のある、あの雰囲気。


「ピアスもハイトーンの髪色も、あと1年したら見納めだってさ」

「見納め? どうして……」

「椎葉家の後継者だからね。高校の間だけ自由を許されてるらしいよ。常に1番の成績であることを条件に」