暗黒王子と危ない夜


「いつも坊っちゃまがお世話になっております」

ぼ、“坊っちゃま”……!
初めて生で聞いた……っ。


「はいっ……えっと、こ、こちらこそお世話になっております……っ」


きちんと返事をする間もなく、三成くんに車内に押し込まれた。


「ちょっ、ちょっと……」

「俺、助手席な」


開けっ放しにされた後ろのドア。
閉めたほうがいいのかな、と手を伸ばしたら、突然、目の前にふっと黒い影が落ちてきた。


「柳居さんお久ぶりです。お世話になります」


そんな言葉と同時、中に乗り込んできたのは本多くん。


いつの間に……!

どっ…と心臓が暴れた。


本多くんが当然のようにあたしの隣に腰を下ろす。



「相沢さん、今日はいきなりごめんね」

「へっ? あ、いや……、全然っ」

「なんか緊張してる?」

「っえと、高級車に慣れなくて……ちょっとだけ、」