暗黒王子と危ない夜


車に詳しくなくても、遠目から見ただけでわかる。

高級車ばかりを扱っているお店で、ガラス張りの室内に展示されているような、アレ。




「もしかして三成、の家ってお金持ちなの?」

「んー。あー…そうかもな。たまに感覚ズレてるって言われるんだ、そのせいで」


薄々気づいてはいたけれど、三成くんも「ただの男子高校生」ではないらしい。


派手な格好をしつつも不思議と気品がある。

履いているスニーカーだって、よく見たらあっと驚くような有名なブランド品だった。


すごいなあ……。

まじまじ見つめていたら、いつの間にか車の手前まで来ていて。
三成くんが運転席に向かって手を上げたと同時、エンジンがかかった。



「先に乗れよ」

三成くんが後方のドアを開けてくれる。


「わ、えっと。おじゃまします……」

「柳居さん、コイツ、この前話してた萌葉」


ヤナイさん、と呼ばれたその人はあたしを見てにこりと微笑んだ。