どうして黒蘭を抜けたのかはわからないけれど。
──裏切り者。
──追放された。
それに至るようなことをしなければ、本多くんは今もずっと黒蘭にいたんだろうか。
その出来事がなかったら、黒蘭は本多くんにとって、居心地のいい場所だったんだろうか。
「あ、車あれな」
考え事をしていたら、三成くんの声に反応するのが遅れてしまった。
はっとして顔をあげると、道端に黒い車が見えた。
慶一郎さんの車とよく似ていてひやりとする。
でも違う。慶一郎さんの車はスポーツカーのような、もっとシャープな造りだったはず。
「高そうな車だね」
「そうか? 一番安くて、乗用車っぽいので来いって頼んだんだけどな」
「へ……。安……くはないよ、どう見ても」



