三成くんが見えなくなったあとも教室の扉のほうをぼうっと眺めていたら、桃香が、制服の袖をちょんちょんと引っ張ってきて。
「愛されてるねっ、萌葉!」
「ええ、なんのはなし……」
「朝も放課後もあのふたりと一緒なんでしょ? 最高じゃん!」
「桃香あのね、」
「騎士2人に守られる姫って感じ?!少女漫画じゃん!!」
完全に楽しんでる。
実際は、少女漫画みたいに楽しい世界の話じゃない……たぶん、きっとそう。
本多くんたちの日常は、他の男子高校生とはかけ離れたもののはず。
「早く伊代にも話してあげないと! あの子寝ぼすけだから来ても1限ギリギリだろうねえ」
「あはは……。間に合うといいね」
そんな話をしているうちに、もう朝礼の5分前になっていた。
桃香が自分の席に戻っていき、あたしも鞄から教科書たちを取り出す。
── “ おれたちの倉庫、来る? ”
今朝の本多くんの言葉が
頭の中で響いた。



