暗黒王子と危ない夜


桃香は目をギラギラさせながらあたしたちの話を聞いていた。


「俺んちの車、な」

「ああ、お家のひとの車……」

「つっても運転すんの親とかじゃねえから、気ぃ遣わなくていーし。かしこまらなくてもいーから」

「は、はい……」


親じゃないなら誰……?
気になりつつも、質問してばかりで申し訳なくなって、一旦黙ることにした。

三成くんは基本的に言葉が足りない。



「じゃあ俺、朝礼サボるからまたな」


連絡事項を伝えてに来ただけらしい彼は、そそくさと背を向けてしまう。

三成くんが朝礼をさぼるなら、たぶん本多くんも来ないだろうな、と思う。


桃香が「え〜もう行っちゃうの?」と残念そうになげいた。


「……あ、そうだ萌葉」


ドアの手前で思い出したようにこちらを振り向いた三成くん。


「今日、お前も来るんだよな?」

「え、なに……」

「本多が誘ったって言ってたぞ。集合場所は裏門な。終礼終わったらすぐ来いよ」


それだけ残して、出て行ってしまった。