暗黒王子と危ない夜


「わあっ、椎葉くん!」


あたしが振り向くより先に桃香が声をあげて反応した。

桃香を見た三成くんがニッと微笑む。



「どうも」

比較的派手で、顔も整ったふたりが並ぶととてもいい図になる。

これこそ “ お似合い ” だ。



「椎葉くん、いちごオレなんて飲むんだね〜意外。ちょっと可愛いかも!」


桃香の言葉に釣られて見てみると、三成くんの手には学校の自販機で買ったと思われるパックジュースが握られていた。


確か昨日の放課後も、同じような飲み物を持っていたような気がする。

中島くんといい、三成くんといい、見た目によらず甘いものが好きらしい。



「片やこの萌葉チャンはね、カフェとか行ってもあんまり甘いもの頼まないんだよー」

「へえ、そうなのか?」

「うん。この前なんかスタバの新作出たから3人で行ったのに、1人だけブラック頼んでたんだよ?めっちゃウケるくない?」


あたしをおいて、あたしの話題で盛り上がるふたり。

別に甘いものが嫌いなわけじゃない。

甘いものは太るから控えなさいって、小さい頃からお母さんに言われて育ったから……。