「本多くんって女関係でもいろいろ噂あるけどさ、学校では高嶺の花じゃん? 簡単に踏み込ませてくれなさそうっていうか、実際に告白までいく子は超少ないらしいし。だからね、もし他の女子に嫌がらせとかされたら絶対ウチに言うんだよ!」
あたしが口をはさむ間もなくそう言い切った桃香。
その気遣いはありがたいけれど、残念ながら桃香が思っているような関係じゃない。
「ありがと……。でもあたし本多くんと付き合ってない……から」
できるだけ冷静にそう伝える。
「ええっ、なんで!?」
「なんでって言われても……」
「お似合いなのに! 萌葉可愛いし、本多くんはかっこいいじゃん! 誰も文句なんか言えないよ〜っ」
「………は、ええ?」
恋愛脳な桃香の思考は、時々よくわからない。
いくら他人から見てお似合いでも、その間に本人たちの気持ちがないなら意味がないのに。
もっとも、あたしなんかが本多くんと釣り合うわけもないんだけど……。
「それより桃香。よかったらお昼休み、いっしょに学食に──」
──付き合ってくれない?
そう、言いかけた言葉は
「萌葉」
後ろから飛んできた声に遮られた。



