「相沢さん、うしろ……下がって」


そう言われてとっさに動けるほどの余裕はなかった。



「来た道を少し戻って、駐車場から体育館の表に回って。いい?」

「……わかっ、た」


だけど、頭では逃げなきゃって思うのに、足は地面に貼り付いたように動かない。



「何してるの、早く行って」

「でも、そしたら本多くんが」

「おれは大丈夫だから」


暗がりの中で目が合うと、本多くんはもう一度「大丈夫」と念を押して、視線であたしを後ろへと促した。



そのとき。
──突然、スマホが鳴った。


かと思えばその直後、あたしたちが息を潜めていた場所に、パッとライトが当てられた。

目の前が一瞬にして白く染まる。