暗黒王子と危ない夜


軽い口調で落とされたその言葉が、あたしには鉛のように重たく感じた。

やがて歩行者側の信号が青に変わり、再び歩きだす。


渡ってしまったらもう、学校まで真っ直ぐ進むだけ。数メートル前の方では生徒たちが挨拶を交わし合っている。

あたしたちの会話は、途切れてしまった。



ふたり肩を並べて歩いて、周りの人たちからはどう見られているんだろうと、ふと思う。


いつもより視線を感じるのは気のせいだと思いたい……のに。

本多七瀬くの側を歩いて、目立たないことの方が無理だとわかる。



「そういえば、」


周りの目ばかりを気にしていたところに、本多くんの声。

顔をのぞき込まれているのが分かるのに、つい俯いてしまう。



「相沢さん、今日の放課後空いてる?」

「放課後……?うん、空いてる、けど」


ゆっくり顔を上げると、本多くんは口にするのを躊躇うように、いったん視線を外して。

また、合わせて。


「……おれたちの倉庫、来る?」


柔らかそうな黒髪が、さらりと揺れた。