「少しだけ……。本多くんのお父さんの代で、一度崩壊したって……。それから、慶一郎さんが……」
引き継いだ。
復活させた。
乗っ取った──。
どう言い表すのが正しいのか分からず、黙り込んでしまった。
「うん。商社の社長っていうのは、慶一郎さんの表向きの顔でしかない。裏では、好き放題やってる黒蘭の総裁」
「……そうさい?」
「組のトップってこと」
「……そっか」
あらかじめ聞いていた話。
今さら驚くことじゃない。
ただ、“そういう組織”のトップなんてもっと厳つくて凶悪なイメージがあったし、もっと年輩の男性がなるものだと思っていた。
慶一郎さんは十分、“ 怖い人” ではあったけど……。
「全然そうは見えないでしょ」
「えっ」
「でもあの人の体すごいよ。ドラマで見るみたいなやつ、墨とか。相沢さん絶対びっくりすると思う」
「スミ……」
あ、入れ墨のことかなと数テンポ遅れて理解する。
「ついでに言うと、たぶん相沢さんが思ってるよりも、けっこう年上」



