「昨日はごめん。中島と相沢さんが一緒にいること、頭から抜けてて……また巻き込んだ」


歩きだした本多くんがぽつりと零した。

この前から謝られてばかりな気がする。



「全然……あたしは全然大丈夫だよ」


やや後ろを付いていくように歩いてたら、本多くんが歩く速度を落として、自然と隣に並ぶかたちになった。


大通りに出る前の、せまい路地。

あたしたち以外にひと影はない。


「まずはおれのこと話すべきなんだろうけど、三成と中島から既に色々聞いてるよね」

「……うん。でも、あんまり詳しいことは聞いてないよ」

「そっか。どう説明したらいいかとか、おれもイマイチ分かんなくて」



なにから話そうか、と視線が流れてきて、どぎまぎしてしまう。


「……黒蘭の話は、聞いた?」


どきっとする。

本多くんの口から“ 黒蘭 ”という名前が出たことで、昨日中島くんから聞いた話が初めて現実味を帯びた気がした。