カウンターをあとにした中島くんがあたしの隣に並び、ふう、と深い息を吐いた。
「ほっんと問題児。やってらんねー」
扉が開いて、らせん階段に出る。下から吹き抜けてきた風がスカートを揺らした。
道路脇に、慶一郎さんの車。
待たせているからと、自然と早足になる。
助手席には本多くんが乗っていて、なにやら話しこんでるみたいだった。
「中島くん今さっき、本多くんのこと下の名前で呼んでた……よね。ずっと苗字だったのに」
あたしたちの足音が一定のリズムで響く中、さりげなく、を装って問いかける。
「そうだっけ」
「そうだよ。“七瀬は、大丈夫って言ってる時が一番危ないからね”って……」
「あー、……うん」
それ以上何も言わない。
あまり振れられたくない話なのか、それとも別のことを考えているのか。
だけど階段を下りきったところで中島くんはふと足を止め、あたしを見た。