暗黒王子と危ない夜


「本多くんはこの後どうするの?」

「用事が色々残ってるから、片付けて帰るよ」



曖昧な言葉でうまく交わされた感じ。
言いたくないのかもしれない、けど。



「もしかして危ない人に狙われてたり、とかしない……よね?」


すると、くすっと笑われた。


「おれに用がある奴はたしかに多いかも」

「……っえ、まさか、ほんとに狙われて──」



言いかけたのと、ほぼ同時。

隣ではっと息を呑む気配がした。


「本多くん?」

「しっ。……静かに」


空気が変わる。

存在を殺すように息をひそめていると、少し奥の方から、数人の話し声が聞こえてきた。