次に車が止まったのは西区の外れ。古びた建物が並ぶ、せまい裏道だった。
さびれた中層ビル群の中にどこか不穏な空気を感じる。
「さあ着いたよ。降りようか」
エンジンを止めた慶一郎さんがこちらを振り返った。
「萌葉ちゃんはどうする? あれなら、車で待っててもいいけど」
中心街とは違う異様な雰囲気を放つ場所。
今から足を踏み入れると思うと怖気づいてしまうけれど、こんな裏道に一人残される方がよっぽど怖い気もする。
「……一緒に行っても大丈夫ですか?」
不安な気持ちを抱えたまま、ふたりと共に車を降りた。
「店はまだ閉まってる時間だから、裏口から入るね」
促されるまま建物の間を進んでいると、やがて水色に塗られたらせん階段が見えてきた。
「あそこだよ。七瀬がいる場所」
慶一郎さんが、階段の上り詰めたところにある扉を指差した。
錆びついた勝手口のようなドア。 上の方で換気扇が回っている。
周りの建物に挟まれているせいか全体的に薄暗く、不気味さを感じずにはいられない。
……こんなところに、本当に本多くんが?