言われてみれば、西高の評判で良いものは聞いたことがないかもしれない。


「もともと校則ゆっるいし、クラスによっちゃ無法地帯」


たしか、工業系の学科が入っているから男子の割合が高かったはず。
そのうえ校則が緩いとなれば荒れるのも想像つく。



「中島くんはなんで西高に行ったの?」


学校での姿は知らないけれど、煙草以外に、素行が悪い要素は特に見つからない。


「それは単純に、家が近かったからで──」


言葉を切る中島くん。

視線は窓の外。



「……戻ってきた、慶一郎さん」


そう言うと、ふうと息を吐いて、もたれかかっていた姿勢をピンと正した。



「今から本多くんのところに行く……んだよね?」

「あーいやだなー。相沢さん巻き込んじゃって、俺ぜったい怒られるし」


「ごっ、ごめんなさい……あたしが勝手に」

「いやいーんだよ。男ばっかだとむさ苦しいし」


「……、あ、えと、それで本多くんはほんとに大丈夫なの?」


しつこいと分かっていながらも気がかりで仕方ない。