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「──黒蘭会って聞いたことない?」


中島くんがまず口にしたセリフはそれだった。

コクランカイ………“ 黒蘭会 ”。


知ってる。

昔、西区を支配していたと言われている……最大の極道組織の名前だから。



「でも……黒蘭って、都市伝説みたいなものだよね?」


有名な噂として残ってはいるものの、もうそれは昔バナシのようなものとして聞かされた記憶しかなくて。

今その名前を聞いて、懐かしいと感じたくらいだ。


かなり劣悪な組織だったと聞いたことがあるけれど、メンバーの名前など具体的な情報が上がってきたことはなく。

本当に実在していたわけじゃないと、あたしは認識していた。

そしてそれは、あたしだけではなく、周りの人もほとんどがそう思っているはずで……。



それなのに。



「残念ながら、黒蘭は都市伝説なんかじゃない」

「えっ?」

「実在してた。そして今も存在してる。正確に言えば、数年前に生き返った……」


暗い声だった。


「慶一郎さんが、……三崎慶一郎が、
かつて滅んだ黒蘭を復活させた」