慶一郎さんは、まだコンビニから戻ってこない。
「女の扱いには慣れてるよ。甘やかすのも上手いしたぶらかすのも上手い」
「たぶらかすって……」
「言ったろ?俺よりタチ悪いって。自分の感情関係なく、あいつは人に優しくできる」
中島くんの言葉を鵜呑みにするなら、本多くんはとてもひどい人だ。
じゃあ昨日の出来事もやっぱり、あたしをからかったとか……そんな感じだったんだろうな。
反応を見て楽しんでいたのかもしれない。
そう考えるとドキドキしていた気持ちが急にしぼんでいって、もやっとした暗い部分だけが残った。
それに追い打ちをかけるように中島くんは続ける。
「本多、女いるよ」
「───え?」
「付き合ってないけど、特定の女がいる」
「……」
そう……なんだ。
つくった笑顔は、わざとらしかったかもしれない。
付き合ってないけど、特定の人がいる。
矛盾してるようにも聞こえるけど……。
「あ……そういえば、中島くんと慶一郎さんが話してた、仕事とか、任務とか……あれってどういうこと?」
無意識に話題を逸らそうとしていた。
気にしてることを知られたくなくて。