「本多を好きになった女は苦労する」
「……そんな、感じはするかも」
わかる気がする。
本多くんは秘密で固めたような人。簡単には入り込ませてくれない。優しい笑顔の裏側は、いつだって見えない。
「女には懲りてるはずだけど、切れない関係ってあるからさ」
中島くんはそう言って、苦く笑ってみせた。
本多くんのいないところで、本多くんの話をしている。学校でウワサの本多七瀬くんの話。
つい最近まで関わったこともないただのクラスメイトだったはずなのに、今こうして、彼の幼なじみと一緒にいて。
「あの……ね。あたし、昨日本多くんと一緒に帰ったんだ」
本多くんとの出来事を打ち明けようとしている自分が、一瞬他人のように思えた。
自分の今の状況を離れたところで客観的に見ているような、不思議な感覚。
「……うん、それで?」
先を促してくる中島くんの言葉に、はっと思いとどまる。



