暗黒王子と危ない夜



「相沢さん、変な顔してどうしたの」

「へっ」

「俺が片想いしてる話、そんなにおもしろい?」

「い、いや……っ。おもしろいとかじゃなくて、ただ、新鮮で? 男子の、恋愛の話とか」



どぎまぎしながらそう返すと、中島くんはなぜか楽しげに笑った。

さっきまでの『死ね』とか言ってた怖い中島くんは、嘘だったかのようにシュッと消え去る。



「相沢さんは、おかしいくらい誰かを好きになったことある?」

「え……? ない、かな」


“おかしいくらい”の基準は人それぞれだと思うけれど、誰か特定の人に苦しいほど恋い焦がれる……みたいな経験はまだしたことがない。



「ワイルド系が好きって言ってたっけ? 今どきそんな男子周りにいるかあ?」

「っ、……あの、それはパッと思いついただけというか……特に、タイプとかはまだわかんなくて」