やがて会話を終えてた中島くんは、あたしに無言でスマホを返した。
それに気付いた慶一郎さんが道路脇に車を停めて、後ろを振り返る。
「で。七瀬どこにいるって?……俺が今向かってた方向で合ってたかな?」
にやりと口角をあげて、そう尋ねる。
「合ってますよ、さすがです。五番街の例の店ですね。でも、まだ気は抜けない状態みたいで」
「ふうん、そっか。……あ、なんかさ、お腹空かない?」
突然の話題転換に、中島くんは背にもたれたまま力なく笑う。
「なんか楽しそうですね。任務の成否は気にならないんですか?」
「もう大丈夫だって確信が持てたからね。急ぐ理由もなくなったし、ゆっくり行こう」
「……そうですか」
慶一郎さんはそのまま、車のエンジンを切った。
あたしは、二人の間ではきちんと成立しているらしい会話の意味が、まったく理解できなかった。
本多くんと直接やり取りをしていたのは中島くん。
それなのに慶一郎さんは、さも状況を全て理解したかのように話を進め始めて……。



