その数秒後。
まるでこの会話を聞いていたかのようなタイミングで、手に持っていたスマホが音を立てた。
「……も、もしもし?」
声がこわばる。すぐに返事はなく、代わりに浅い呼吸が聞こえる。
『相沢さん、なんかあった?大丈夫?』
それは本来あたしが真っ先に言うべきセリフ。
「っ、それより本多くんはっ?大丈夫なの?」
『え、おれ……?』
本多くんが戸惑った声を出す。
沈黙が流れ、そういえば、と思いだした。
本多くんは今、あたしが中島くんと慶一郎さんと一緒にいることを知らないんだ。
そして本多くんがあたしに「大丈夫?」と聞いたのは、恐らく西高の生徒関連で何かトラブルがあったと思ったからに違いない。
「本多くん、今どこにいるの?」
『どこって……。何で?』
「本多くんを探してるから。あたし今、中島くんと……一緒にいて」
慶一郎さんの名前は出さなかった。
深く考えての判断じゃない。出さない方がいいかもって、なぜか咄嗟にそう思ったから。



