暗黒王子と危ない夜



「あの、ちょっと聞いても大丈夫?」


本多くんが頷くまでしばらくの間があった。

体育館から漏れる光が彼の輪郭を照らして、闇の中で美しさを際立たせている。



「今日、本多くんが危ないって言ったのは」

「うん」

「……不審者とか、そういう感じの、もの?」

「まあ、そんな感じかなあ」


案の定、答えをぼかされた。

聞いたら、だめなことだったかな……。



「ちょっと面倒くさい奴らなんだよね」

「めんどうくさい、やつら……」


真剣な顔で話を聞くあたしを見下ろして、本多くんがふっと吹き出した。


「オウム返し」


おかしそう笑われて、不覚にも胸がぎゅっと狭くなる。