暗黒王子と危ない夜


「……はい」



掠れた声しかでなかった。


「そんなに怯えなくてもいいのに」

「あ…っ…すみません、初対面の人には緊張してしまって、」


「七瀬は賢いよ。起こりうる状況を全て頭に叩きこんで、常に最悪を前提として動いてる。俺が手を貸さなくても、いつだって上手くやる」

「……」


あたしは怯えてる。間違いない。

今、自分が置かれている状況に……本多くんが、危ないかもしれないこの状況に。


でも一番怯えているのは、目の前にいるこの人に対してだ。


「七瀬には七瀬の用意した立派なシナリオがあるんだよ。最初に琉生くんに助けの電話を掛けたのも、演出の一つにすぎない」


その言葉に、中島くんがピクリと反応した。


「俺の読みが正しければ、もうじき萌葉ちゃんのスマホに連絡が入るはずだ」