暗黒王子と危ない夜


車内が一瞬、しんと静まった。


「もしそんなことになってたら、折檻(せっかん)部屋行き」


隣で、中島くんが小さく息を飲んだのがわかった。



「背中の焼け痕増えるだろうな」


軽い口調で放たれたその言葉は、どこまで本気なのかわからない。

たとえ冗談だったとしても……この人と一緒にいたくないと思った。

恐ろしいことを平然と口にする人だから。


今すぐこの空間から逃げ出したくてたまらなくなる。

気持ちを紛らわすため、窓の外に目を移そうと顔をあげたと同時、ミラー越しに目が合ってしまった。


「萌葉ちゃん、だっけ?」


ドクンと心臓が跳ねる。