暗黒王子と危ない夜


そして慶一郎さんは車の後部座席を指差し、「乗って」と合図した。


「ここで話してる暇はあまりないから、詳しいことは車の中で、ね」


背中を押されて、困惑する。



「あたしも乗るんですか?」

「だって、君がいないと意味がないから」

「え?」

「七瀬の番号に繋げられるんでしょ?」



思わずスマホを握りしめた。



「だけど……本多くん出なかったし、」

「大丈夫。あと数分後に、折り返してくるはずだから」

「……?」


どういう意味ですか?と疑問をぶつける暇もなく、そのまま後ろの座席に押し込まれた。


あたしの隣に座った中島くんが

「……慶一郎さん」

と、遠慮気味に呼びかける。